純喫茶には様々な魅力がありますが、私が必ず味わいたいメニューはコーヒーです。な...

純喫茶のコーヒーは、お店の個性を物語る。 探しに行こう、わたしの一杯。

 純喫茶には様々な魅力がありますが、私が必ず味わいたいメニューはコーヒーです。なぜなら、注文する際に「ホット」や「アイス」で注文ができてしまうくらい、純喫茶にとって当たり前の存在であると思っているから。また、コーヒーカップがテーブルに置いてある間は「その一杯がなくなるまで、ここにいていいんだ」と安心させてくれる、純喫茶におけるお守りみたいな存在でもあると感じています。
 同じ「コーヒー」というメニューでもお店によってまったく異なっていて、温度ひとつとってもその差を感じられます。他にも苦みと酸味のバランス、アイスとホットでの淹れ方の違い、注文を受けてから一杯ずついれるお店もあれば、まとめて淹れておいて注文が入ったら都度温めなおすお店もあったり......と、何より純喫茶のコーヒーには、店主たちの個性が色濃く表れているのです。
 今回はそんな「一杯が物語る純喫茶の個性」について、お話させていただければと思います。

いつ来ても、変わらない味を。
「紅鹿舎」のサイフォン式コーヒー

 「味にばらつきがなく、いれる人によって変わらないから」と、サイフォン式のコーヒーにこだわっているのは、ピザトースト発祥のお店としても有名な、日比谷に位置する「紅鹿舎」。このお店では、ダッチコーヒー(水出しコーヒー)以外のすべてのコーヒーをサイフォンでいれています。ブレンドを注文すると、抽出したあとに一杯分のコーヒーをテーブルまで持ってきてくれて、店員さんが目の前で注いでくれるのです。そういったアミューズメント性が高いのも、こちらの特徴です。お客様に喜んでもらうためにと用意された品数はなんと240種類。メニュー表を見ているだけで心が弾む素敵なお店です。

マスター

 「ひとりでもそのメニューのファンがいる限り、廃止することなく一品一品を大切に提供し続けたい」と語って下さったマスター。サイフォン式を選んでいる理由は「変わらない味を提供し続けられる」という想いから。長い歴史のあるお店だからこそ、どんなお客様がいついらしても同じようにお迎えできるよう、「いつもと同じ」を意識されています。例えば、看板メニューであるピザトーストは、チーズやパンなどの材料をオープン当初の銘柄のまま同じものをずっと使い続けていること、入口近くの席を照らす貝殻でできたライトは、変色してもなおメンテナンスを施して使い続けていることなどからも分かります。 そんな「お客さま一人ひとりがいつ来ても楽しんでもらえるように」という想いが、お店のいたるところににじみ出ているのです。
 洋食店から始まったゆえの自家製のフードメニューはもちろんのこと、オリジナルメニューの「カフェ・タカラズカ」はぜひ楽しんでいただきたい一品です。近くに位置する東京宝塚劇場を訪れた人たちに喜んでもらえるようにと始められたもので、グラスの中央に咲いていたクリームのバラの花が、注がれたコーヒーによってくるくると回転しながら踊るように浮かび上がってくるのです。底に敷かれたブルーキュラソー(オレンジのリキュール)が染み込んだ青い宝石のような砂糖も美しく、見て楽しい飲んでおいしい、日比谷にあるゆえの特徴を打ち出したメニューになっています。

マスター

紅鹿舎(べにしか)
〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-6-8 松井ビル 1F

思い思いの時間を、邪魔せず心地良く。
「コーヒーショップ カスタム」のネルドリップコーヒー

 都営新宿線・小川町駅が最寄りの「コーヒーショップ カスタム」は、ネルで丁寧に抽出したコーヒーを味わえるお店です。何杯でも飲みたくなるバランスのとれた「みんなが飲めるコーヒー」がお好きだというマスター。「ネルで出すさっぱりしていてひっかからないコーヒーが自分には合っている」と、オープン時から変わらずネルドリップでのコーヒーを提供し続けているとのことです。
 例にもれず、カスタムさんでも常連客が多く、毎日来てくれる方はもちろん、日に二度いらっしゃる方もいるとのこと。ひと息つくために、仕事の打ち合わせのために、利用目的はさまざまです。地下にありますが、広い空間を照らす明かりのほどよいあたたかみ、そして音楽好きなマスターが流すオールディーズソングが生み出す落ち着き、何より「一人ひとりの時間を邪魔しない、心地良い一杯のコーヒー」が、常連客のみならず初めて訪れた人たちを何度も足を運ばせる所以なのでしょう。
 そんなカスタムでは「アイスコーヒー」も人気です。飲みやすさを意識して作られていて、くどくなく、苦みや酸味も強すぎないのにどこか特徴的な「ここでしか飲めない一杯」で、季節問わず注文が入る看板メニューのひとつです。同じくよく出る、マスターもおすすめの「イカ明太子パスタ」との相性もばっちり。やわらかすぎずちょうどいい固さの、しょうゆの効いた和風オイルで味つけられた麺に絡まる、イカと明太子にマッシュルーム。一度口にしたらまた食べたくなる、そんなふたつのメニューをぜひ味わってみてください。

マスター

コーヒーショップ カスタム
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町1-1 B1F

家族経営ならではの愛情とぬくもりの空間を。
「ブラウン喫茶 デルコッファー」のハンドドリップコーヒー

 「おいしいコーヒーは、愛情がいちばん」そう語ってくれたのは、本所吾妻橋駅近くに位置する「ブラウン喫茶 デルコッファー」の2代目。「“その一杯に気持ちが入っているかどうか”が味に関わっていると思っています。実際に、集中して真剣に向き合ってたっぷり愛情を注いだ、ドリップ初心者の人が淹れた一杯のほうが、忙しさや慣れで気持ちの入っていない熟練者の一杯より断然おいしいことだってある」と、コーヒーのおいしさについての考えを教えてくださいました。デルコッファーでは、愛情がまっすぐ伝わるハンドドリップのコーヒーを、可愛らしいカップで味わうことができます。

マスター

 純喫茶で時間を過ごしているときの「誰かのご自宅にお邪魔させていただいているような感覚」は、魅力のひとつであり、私の好きなところでもあるのですが、デルコッファーはそういった「アットホームなあたたかさ」を特に感じられるお店ではないかと思っています。先代であるお父様からお店を引き継がれた2代目は、こだわって作り上げられたその空間をより良くしていきたいという想いのもと、店内装飾を新しくしてメニューのレシピのリニューアルを図るなどされています。また、店内の雰囲気を象徴する色味を用いて「ブラウン喫茶」を名乗るようになりました。「経年で変化するブラウンの色が好きなんです。美しく時間を重ねていくこのお店のブラウン色を保ってもっと美しくしていくために、その決意を込めて名付けました」と、その想いも聞かせてくれました。 そんな、ご家族の愛情が詰まったここにしかない空間を、コーヒーと一緒にぜひ体験していただきたいと思います。今後の看板メニューを目指して開発された新メニュー「ブラウンクリームソーダ」にも注目です。

マスター

ブラウン喫茶 デルコッファー
〒130-0001 東京都墨田区吾妻橋3-1-10 ローヤルジュン 1F

さあ、コーヒーをめぐる旅へ。迷ったらまずは、ブレンドから。

 それぞれの個性が表れる、純喫茶のコーヒー。さまざまなお店の味を楽しんで「自分の一杯」を見つけてもらえたらと思います。  「コーヒーのメニューがたくさんあってどれを頼めばいいか分からない」そんなときには、お店のこだわりが詰まっていることが多いブレンドコーヒーを注文してみるのはいかがでしょうか?
 また、自分の好みの味かどうかの出会いを楽しむだけでなく、「そのお店のマスターがどんな味を好んでいるのか」「お店をやろうとしたときにどんなコーヒーに興味を持って始めたのか」「長い間常連さんから愛されてきたのはどんな味なのか」そんな探究心をもって味わうのも、楽しみ方のひとつだと思います。自分の好みの味でしたらマスターに話しかけてみて、休日などによく訪れる喫茶店を聞いてみるのもその歴史を覗きみるようで楽しいものです。
 お店ごとのコーヒーのおいしさと個性を、“純喫茶ジャーニー”の中で存分に味わってみてください。 「純喫茶ジャーニーはこちらから」

記事著者:難波里奈(なんば りな)
東京喫茶店研究所二代目所長。東京生まれ・東京育ち。
現在、一般企業に勤務の会社員でありながら、仕事帰りや休日にひたすら訪ねた純喫茶は2000軒以上に

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